そうして先生の手が髪を撫でる。
先生の手は少し震えてるような気がしたけど実際に震えていたのはこの身体の方かもしれない。
抱きしめていた腕の力が緩んで心地いい息苦しさから解放される。
「先生…」
「帰るって言われたら…どぉしようかと思った…」
「…」
「んな、物わかりのいい男じゃねぇくせにカッコつけんのは」
「…先生」
抱きしめる腕が完全に解かれる。
お互いの身体が離れて先生の顔が見える。
うつ向いていて少し泣き出しそうに見えたけど口元が力なく笑っている。
こんな笑い方をする先生を初めて見た。
そもそもうつ向いてる先生てのが珍しい。固めていない前髪が垂れている。
やがて先生は顔をあげる。
再び抱き寄せられる。
「…やっぱ性分じゃねぇや」
唇が被さってくる。重なるというよりも奪うようなキス。
歯が当たろうが唾液が漏れようがお構いなしで浸蝕される。
上体が自分で支えられない。ぐにゃぐにゃと倒れそうになるのを先生の腕が支えあげてくれた。
唇をはなし「立てるか?」と聞いてくる。
立てる自信はなかったけど頷くと脇腹を挟みこみ立ち上がらされる。
正直脚がもつれて誘導にうまく従えない。
自分の身体がここまで言うことを聞かないことに戸惑った。
半ば先生に引きずられるような感じで先生のベッドに着陸する。
倒れこんだ肩先から上に違和感があるのは枕がないせいだ。
枕は遥か遠い部屋の真ん中で置き去りにされている。
そのまま被さってくるのかと思いきや先生はガバっと身体を離して大股で枕を取りに行き
帰りにまるでついでみたいな仕草でコードを引き部屋の灯りを消した。
常夜灯だけになった部屋に雨の音がさっきより大きく分け入ってくる気がする。
その部屋の真ん中で先生は首を玄関の方に向けて固まったみたいに見えた。
目が慣れてないから先生の顔がわかりにくい。
かわりに着崩れたパーカの襟からがっしりした鎖骨が弱い光の中でも見える。
「先生?」
「あ、悪い」
何を考えてたんだろう?
時々先生はふっと心ここにあらずな目をするときがある。
なにを考えているのかなんて女々しい感じがして聞けやしないけど少し先生が遠く感じてしまう。
先生は戻ってきて頭を抱えてくる。
持っている枕を下に滑りこませてから自分も覆い被さってきた。
ベッドのスプリングがギシリと音を立てる。
それが合図のように脈がはね上がってきた。
今から抱かれるという実感。
そうだ。『そのつもりで』来たんだと思い知る。
見舞い?
手伝い?
違う。
綺麗事はもはや意味を持たない。
好きなんてもんじゃない。
イカレてる。
自分の中の先生に冒されてる部分は完全にイカレてる。
会って話せない目で追うだけの日々、
よく正気を保てたものだと改めてここ(念のために言っておくが「ここ」はこの部屋のことじゃない)に来て思う。
先生の手が顔を挟み込む。
頬が熱いのはきっとバレてる。
やっと言わなきゃいけなかったことを口にする。
「先生、会いたかった…」
先生は何を今更と思ったかも知れない。
でもすぐに「しんどい想いさせたな」と笑った。
先生の手が制服のネクタイをほどく。
しゅるしゅると衣ずれの音がする。
次にカーディガン、シャツ。それから…。
てきぱきと言う言葉と同時にTVで見たマグロの解体ショーをふっと思い出した。
料理人の鮮やかな手捌きが先生の『解体』から連想されただけで自分がマグロだと言う訳じゃない。
多分マグロじゃないと…思う。
その証拠にすっかりはだけられた肌の上を先生の手がちょっと這っただけで
自分でもはしたないと思うくらいに声が洩れてしまう。
先生には当然聞こえてるはずでがっついたヤツとか思われてたら嫌だなと
少し身体をよじってまだ腕から抜けてない制服の袖で洩れる声に蓋をするように口を覆う。
そうしたら今度は身体が震えだしてくる。
おまけに先生が右の突起を指でこねはじめたからびくんと身体が大きく反ってしまった。
「お前、マジでエロい身体してんなぁ」
と先生の声がする。
言い方が意地悪く聞こえて口惜しくなった。
したくて反応してる訳じゃないという抗議を込めて顔を背けると「怒んな。褒めてるんだからよ」と頭を撫でられる。
「先生だって…今日はそんなガッツないって…」
「…じゃ、止めるか?」
「え?」
いじっている手を浮かせる。
「やだ…せんせ」
「冗談。ここで止めたら俺が悶死するぜ」
クスクス笑いながら手のひらは再び舞い降りる。
「先生、もう意地悪やめて下さい」
「好きなヤツっていじめたくなるんだよな」
小学生か。
先生の方がよっぽどガキじゃないかと思ったが
そのガキの手がベルトを外されたズボンの奥に滑り込んできたのでそんなこともすっかり消し飛ぶ。
押し殺しても声が出る。
脈うつたびに首をもたげてくるのを先生の手が覆っているものだから下着が窮屈だ。
先生もそう思ったのか上体を起こし身体をずらせる。
「ケツ上げな」と言われてその通りにしたらズボンから靴下まで全部脚から抜き取られてしまった。
直接空気に触れる足先が冷たく感じる。
その爪先を先生の手がくるんできた。温かい。
土踏まずのツボをギュウギュウ押してくるのが気持ちよかったけど
いきなりコチョコチョやってきたので思わず膝を折って足をひっこめた。
すると折った膝を掴まれて押し広げられる。
さらけ出してるという恥ずかしさを感じる前に先生がくわえ込んできた。
溶けそうな刺激と羞恥に身体が硬くなる。
先生の素髪が内股を撫でる。
風呂を使わせて貰えばよかったとか、アレ?先生一緒に入るんじゃなかったっけか、
とかふっと思ったけど先生のくわえて舐めてるというよりか甘噛みみたいな感触に
そんな呑気なことを考えてられなくなる。
さらに後ろの穴にぬるりと先生の指が入ってきたので完全にまともな思考が保てなくなってきた。
先生の指は入り口近くのイイ所をほじくるように突いてくる。
そこは先生しか知らない場所。
変になりそうだ。いや、もうなってる。
訳のわからないことを勝手に口走ってるのかも知れない。
さらに指が二本、三本と満たしてくる。
くわえられてるものももしかしたらもう何度かイッてんじゃないか?
腹から下が自分の身体じゃないみたいだ。
イカレてる。
先生に触れられて冒された所は完全にイカレてる。
そのイカレた部分がじわじわ他の所を侵しだす。
そして離された先生の唇がさらに甘やかなものを口にしたのでそれは加速する。
「…一護」
脳天がしびれるくらいの甘い旋律。
応えるように「せんせ…」と呼ぶと先生は着ていたものを脱ぎすてて身体を重ねてきた。
もつれるようにして制服から腕を抜く。
もう隔てるものがない中で先生の肌を体温を匂いを貪った。
先生も全部俺のものだと言わんばかりの絨毯攻撃で唇を這わせてくる。
即ち髪の生え際から顔、耳から首筋。
先生の唇が触れなかった場所はないんじゃないかと言う程のキスの嵐。
前に抱かれたときよりも優しくて甘くて激しく。
また唇を捕らえられる。
深く先生の舌に侵して欲しくて先生の頭に手をまわして引き寄せる。
ぴったり合う位置を探すように角度を変えながらお互いの唇を舌を求めあった。
身体の奥がひくつくのが分かる。
お互いの熱を持った部分が擦れあう。
先生の硬くなってるものが下腹部にあたるのを感じて身体の中心がさらに疼く。早く…
たまらず先生を呼ぶ。
「先生、…」だけどどうせがんでいいのか分からない。
どう言ってもがっついているような気がする。
確かにがっついてはいるけれど出来るだけ少しでもそれを気取られたくない。
「何だ?」先生が応える。
「あ…あの」恥ずかしくて口篭る。
言いかけの言葉を待っている先生の動きが完全に止まったからなにか放り出された感じがする。
だけど「あ…あの…先生」続きが言えない。
思わず足をシーツに擦りつけてモゾモゾしてしまった。
これでなんとか察して欲しい。
先生は少し目を丸くしたように見えたけどすぐにそれを細めて笑った。
前髪を鋤くように撫でられる。
そして先生は重なっていた上体を起こす。
甘美な息苦しさから解放されたのと多分通じたという安堵から息が深く漏れた。
脚を開かされ先生の下半身が分け入ってくる。
「身体、反らすなよ」と言われて頷く。
ゆっくり先生が入ってきた。こじあけられる熱のある痛みが走る。
思わず反りそうになる身体を枕で踏ん張る。
「痛いか」と聞かれて首を振る。
先生は「ほんとか?無理すんな」と覗き込んでくる。
わかるんだろうか?
このズキズキとした律動はどっちの脈だろうか。
それともお互いの脈動はシンクロしてすっかり同じ律動を打っているのだろうか?
ならもしかして…
「先生は?」
問いかけに先生は吹き出すように笑って答える。
「ちょっ…とキツい」
ああやっぱりそうなんだ。
「だからお前も痛いんじゃねぇかなって」
ほんとは痛いけど首を振る。
「大丈夫か?動かすぜ」
ゆっくりと先生が突いてくる。
ねっとりと痛みが捩込まれる感じ。
先生が引くと今度は入り口付近が捲れあがる感じ。
どちらにしてもぴたりと先生を捉えていることが痛みに勝る快感になる。
先生はどうなんだろう?
この身体で先生を気持ちよくしてあげられてるんだろうか?
先生の様子を伺おうと閉じていた目を薄く開けると先生とばっちり目があってしまった。
これ以上は物理的に無理って言うくらいにひとつになっていて
この期に及んで目があっただけでときめくなんて微温い環境には今現在ないはずなのに
胸が早鐘のように高鳴った。
見てくれてるという嬉しさ。
先生の視線を独り占めしてるという高揚。
中の先生がイイ所を突き上げてきた。
すでに痛みは快感に覆される。気持ちいい。
先生の身体に圧迫されてる自分のものも先生の動きに擦られてよじられる。イキそうだ。
「先生、…」
「イクか?」
頷くとさらに激しく突き上げられる。
聞いてて自分でも恥ずかしくなるようないやらしいあえぎ声が途切れ途切れの息と共に出る。
先生に聞かれるのが恥ずかしくて思わずしがみついて手をまわした先生の背中が少し汗ばんでいる。
先生も熱くなってると感じて嬉しくなる。
先生の右手が掴んでくる。
今にもはち切れそうな先端を指の腹で撫で回す。しごかれる。もうダメだ。
びくりと身体が電気に撃たれたように痙攣する。
下半身がぐずぐず溶けるよう。
力が入らないのに身体はこわばる感じ。
先生も激しく追い上げてくる。
ベッドのスプリングがギチギチ軋む。先生の息も完全に上がっている。
一段と大きく突き上げてきて身体の中心がじゅんと熱くなるのを感じた。
そうして先生が身体を浮かす。
頬を撫でられる。
その手のひらに唇を寄せると先生の親指が唇を割る。
歯を開けて迎えいれて甘く噛む。他の指は頬をくすぐるように撫でてくる。
ザアザアと音がするのが聞こえる。
そこで初めて外は雨が降ってんだなと実感した。
先生がベッドの横にある棚にある時計を手に
「うわ、ばっちり終わってんな」と言い出した。
何を言ってるんだろう?「テレビ?」
こんな夜にTV番組を気にする根性がガキだと思ったが
「違う。門限」と返ってきたので意味が分からなくなった。
「門限て何のです?」
先生はそんな事もわからないのかと言うような呆れ声を出して「お前、9時だろ?」と言ったからこっちが呆れた。
何か勘違いしている。
「俺ン家、門限とくにないですけど」
先生はあっけに取られたような顔をする。
「え?お前9時って言わなかったっけ?」
「言ってません」
先生はしまったみたいな顔で頭を掻きむしりながら
「まじかよ。だったら前ん時連れ込みゃよかった」とうなだれた。
「前って?」
「キャビアの時だよ。お前9時が門限9時が門限て思ってたからちゃんと9時にお前帰そうって…」
なんだもうバカじゃねぇか俺と先生はベッドに突っ伏した。
バカなのかどうかは断言しないがそこが先生らしいといえば先生らしい。
「まぁ…今日は…」と伏せたまま先生は続ける。
「9時だろうが10時だろうが帰すつもりはねぇけどな」
腕が伸びてきて抱えられる。
そのあと教師失格だなとくぐもった声がした。
先生は起き上がって散らかった中から黒のジャージを拾いあげ履いてから
「黒崎来るんならなんか買っといたのによ」と部屋の灯りをつけたあとキッチンに向かう。
何もねぇぞ買いにいくかと言う声と共にガチャリとドアのノブを回す音がした。
誰か来たのかとビクリとする。
インターホンも鳴らさないでいきなりにガチャリと来る人が他にこの部屋には居るのかととっさに考える。
居酒屋の「テメー」が霞める。
先生にテメーと呼ばれて甘んじてる人?
何もかもを許してる人?
かしこまらずにテメーと呼ぶ何もかも許した人?
その人が今ズケズケ入ってくる…?
まさか?
玄関のほうから先生の声がする。
「やばっ」。
ヤバいんだ。
ヤバい事になってるんだ。
先生がゴミ袋を持って部屋に戻ってくる。
テーブルを覆いつくすピザの箱を潰して袋に放りこむ。
ヤバい割りには呑気だ。別に慌てているようにも見えず誰かが来たから急いで片付けてる訳じゃないみたいだ。
というかもしそうならベッドで裸で寝てる生徒をまずはなんとかするだろう。
誰か来たんじゃないのか?
「先生、俺、します」
「寝てろ。腰痛ぇだろ?」
分別も何もお構いなしで袋に放りこむもんだから結局片付けは見てるあっという間に完了した。
まぁ殆どが燃えるゴミだけど。
「酒飲むか?」とお決まり?に先生が聞いてきた。
それよりさっきの「やべぇ」は何だろう?
「先生さっき玄関開きましたよね…」
と聞くと先生はいきなりニタッと笑って
「すまん。俺玄関の鍵閉めてなかった。やる前にどっちだったか思い出せなくてよ」
あっ。それで電気消したあと固まってたのか!
「で、やっぱり閉めてなかった」
まぁ誰も来やしねぇけど悪かったと言いながらゴミ袋を持ってキッチンに向かう。
「で、飲むのか飲まねぇのか」と声がするので「飲みます」と返事をすると「さすが黒崎ィ」と
超ご機嫌な先生は新しい紙コップとまた割り箸を今度は一膳持ってきた。
また珍奇なワザをご披露してくださるおつもりだろうか?
ていうか何が「さすが」なのかさっぱりわからない。
だけどそんな先生を見て首を傾げる人は居るかも知れないが
心から不愉快になる人は居ないんじゃないかと思う。
教頭にいじめられてるとか先生は言うけどもしかして親近感の現れで
寡黙なあの教師は先生をからかっているんじゃないか?
先生のことが好きな人は案外多いかも知れない。
生徒の中で先生の評価は中の下くらいだ。
これは生徒指導をしているせいだと思う。
いや生徒指導しててこの評価はかなり高得点だ。
なにも生徒にごちゃごちゃ言わない立場にあって下の下という教師も居るには居るんだから。
次に先生は焼酎の瓶と新しく栓をあけていないポカリを持ってきて
ともに栓を開け焼酎を2ポカリを8くらいの割りで二つの紙コップに注ぐ。
マドラー代わりここでに割り箸が登場した。
普通である。
少しがっかりした。
それからテーブルをズルズル引っ張ってベッドの脇に移動させてきた。
コップがベッドからでも取りやすいようにしてくれてるとわかって「ありがとうございます」と礼を言う。
「黒崎、もう敬語いいぞ。二人んときは」と先生が言った。
かなり嬉しかった。
けど「学校でもタメ口になりそうだから今のままでいきます」と言った。
先生は「そうか」とベッドにもたれてコップに口をつけた。
寝ているこっちからは先生の斜め後ろしか見えない。
上半身に服を着ていない肩のラインがすごいなと思った。
何がすごいのかが分からないけどとにかくすごいと思った。
目を奪われる。
あの肩に顔を埋めたのかと思うとドキドキしてきた。
また妙な気分になりそうで 「先生、何か着たほうが」と言うと「おう」と言って腰をあげクローゼットに向かい中を物色しはじめた。 こっちのパーカは着ないつもりだろうか? 見ていると綺麗な青のコーデュロイのシャツを出してきた。 それをこちらに投げてくる。 「お前も着ろや」とハンガーも一本持ってくる。 「制服貸しな」 と手を出すのでおずおずとベッドの隅で団子になってる制服群を渡すと手慣れた様子で団子を解体しハンガーに着せていく。 着せながら先生はいきなりクスクス笑い出した。 「何ですかいきなりやらしいなぁ」と言うと 「いや、これお前、俺が隠したらお前家に帰れねーなって」 今手に持っているシャツだけ着てトボトボ帰りつき自宅ドアを開ける自分の図が頭をよぎる。 生足露出もいいとこでおまけになぜか靴もなく裸足だ。 ついでに言うと外からはわからないが下着も履いていない。 「やめて下さいよ!」 もしかして今の映像がにじみ出て先生に受信されたのかと思うような ドンピシャのタイミングで先生が吹き出したからドキッとした。 多分違うこと想像してんだろうけど。 その先生の想像図もかなり気になるといえばなるんだけど シャツ一枚で帰るに比べたらきっと穏やかに違いないはずだ。 あれは我ながら破壊力があった。 |
■■ |
「やんねーけどそうだったらいぃなぁってよ」
笑いながら先生はハンガーをクローゼットの取っ手にかけて戻り屈んで床に落ちているパーカを拾う。
やっぱりそれ着るんだ。
頭からすっぽり被るととたんにさっきまであった「大人な」フェロモン?が半減して「学生」になった。
着痩せじゃなくて着歳サバという感じかなと思った。
「…ていうかお前も早く着ろや。
変な気になるからソッチ見れねぇんだ」
お互い様だけど言われてハッと握りしめていたシャツを見る。
急いで広げる。
「借ります」
「それ、初任給で買ったやつ。それだけは捨てられねぇ」
だとすると古いのだろうか?
そうは見えない。コーデュロイってすぐにヘタるんだけど。
「二回くらいしか着てねぇしな」
「気に入って買ったんじゃないんですか?」
「気に入って思い入れがあるから着れねぇんだ。」
そんな事聞いたら
「そんな大事なもの、借りていいんですか」
恐縮してしまう。
「ま〜。たかが服だし。気に入ってんのと似合うのは別だし。
それにそれボタン多いから面倒っちいし」
ハァ…そういう事ですか…
先生はテーブルにある灰皿を引き寄せる。
タバコをくわえて火をつけてから
「ま、夢っつーか憧れっつーか、好きなやつとやったあとそれ着せてぇなって、臭ェこと考えてたりもした」
と言ってチラリとこっちを見た。
シャツの青はそんな先生の「純情」の色かも知れない。
買ってずいぶん経つだろうに少しも色褪せていない。
「…着て、くださいますかね?一護サン」
照れ隠しのようなおどけた言い方になにか気の利いた答え方は出来ないものかと考えたけど
結局浮かばないで下を向いて黙って青いシャツに腕を通した。
あまり着ていないというけれどやっぱり先生の匂いがした。
そしてやっぱりとても大きかった。
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