グリ様お誕生日(7月31日)おめでとうございます。 今年はグリ先生のSSでお祝いさせていただきます。 トップにした921代目トップの全体ズはこのページの一番下になります。SSがあんま関係ないっぽくなってしまいましたが。 ちょっと現実離れした設定で。 ご存知の方はピンと来るかと思いますが 某アニメのアレです。 キンタマをお持ちの方はヒュンってなる表現があるのでご注意。 そして長文です。もし興味お持ちの場合、読了までお時間とらせてしまうかと思いますがすみません・・。読了後「つまらん!時間返せ」とか仰られても無理です。 変なタイトルやし・・(さよなら糸色望先生みたいでドヤァと思ってますドヤァ)。 初のスマホ書きSS。誤字脱字も拍車かと思います。自分で見つけた場合、顔真っ赤にしてこっそり直しときますが 気になる箇所などあればお手数ですがご指導いただけると幸いです。 |
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【さよなら6回目の黒崎】 |
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さすがの俺でも5回連続で振られたらいい加減もげそうだ。 てか、振られて…っつっても別れてないからな。 振られたのは誕生日の話な。誕生日に会ってどうこうするってイベントな。 それがうまく行かなかったって話だ。 忘れてたとかタイミングが合わなくて約束を取り付けるとこまでいかなかったのが2回、 あとは約束は取り付けたものの、邪魔が入ってアウトになったのが3回。 そのうち1回はエゲツない台風で黒崎住んでるあたりが床下浸水した。 で、さすがにその足元で出掛けられんだろ。てわけでリセット止む無しだった。 もひとつは俺の部屋のクーラーがぶっ壊れた。 これもあとで考えたらクーラーの効かん灼熱の部屋なんぞ一日くらいほっといて他で場所とりゃいい話なのに、 なんでかそういうトコに気が回らないで黒崎に違う日にすっか?って持ちかけたら先生がそれでいいならってOKもらったんだけど 多分そのせいで結局リセットになった。 あと俺の部屋入ってるマンションの二階から火事な。あれはヤバかった。 六階の俺の部屋にまではさすがに類焼はなかったが煙がすごかったんだよ。 いよいよ夜も更けて黒崎とさあ、ってところで煙もくもく消防車のサイレンウーウーだぜ? てか、このときばかりはがっつかなくて正解だと思った。 いざ合体中に煙とかシャレにならん。 一酸化炭素中毒だかキノコ中毒か知らんが違うところに昇天するわ。 だけど、だけど、もういい加減キツい。 その、5回もうまく行かない自分の誕生日に辟易してんだ。 てか誕生日のスケジュールうまく行かないならそれもまた来年、 そうでなくても次、今度頑張ればいいじゃんって話なんだが、 そう、次だ今度こそと思って寝て夜があけた翌朝の1日がな。変なんだ。おかしいんだよ。 あっ、言い忘れたが俺の誕生日って7月31日な。 だからグレゴリオ暦で生活するグレゴリアンである以上、どう考えても誕生日の翌朝は8月1日になるはずなんだが… あ〜話しても信じて貰えるかどうかワカンネんだけど、 あのよ、俺の誕生日の翌朝が7月1日になってたんだ。信じられるか? カレンダーも携帯の日付けも。朝のニュース番組の女がアナウンスする日付けも。訳わかんねぇ。 てか、7月31日の翌日だから当然学校は休みで俺はそのつもりでいるのに出勤とか、 これが一番きつかったってのはここだけの話な。 勘違いしてもらっちゃ困るが誕生日の翌日が7月1日だからといって俺の誕生日が6月31日にスライドしたって訳じゃねぇぞ。 てか、6月31日ってなんだよ。 俺の中のグレゴリオがそれは無いと叫んでる。 てか、もしあったらその日を俺の聖誕祭にしたいぜ。ギリギリ6月じゃねえか。なんか6って数字好きなんだよ。 6って良くね?なんかさ、2と3で割り切れるあたりとかエロいじゃん。 2Pはもちろん3Pもいけそうなとことかよ。まあ、3Pの予定は今のところないけどな。 あと頑張れば4Pもいけるんじゃないかって可能性が6にはあるような気がする。イカすよな、6。 で、なんだっけ?火事だ。違う。3Pだ。違う。ええと俺の誕生日だ。そう、略して俺誕。 というか俺誕の翌日の話。 7月31日の次の日は8月1日なんてのは小学生だって知ってる。 むしろこの辺りの日付けは小学生ならがっつりインプットされてると思うぜ。 夏休みも8月15日過ぎりゃ脳みそも夏に溶かされて日付けも曖昧になるが、 7月末から8月初旬なんてのはまだ脳みそもシャンとしてるし楽しい日々の連続なんだよ。 日付けを違えるなんて有り得ねぇ。 特に俺誕もあることだしな。 俺誕の翌日は8月1日。 これはシュメールに暦が編み出される前から決まってる。 いや、シュメール暦に31日とかねーからユリウス暦だな。 まぁ今適当に言ってるからどっちでもいいや。 そんな8月1日なんだが、来ない。 8月が俺んとこに来ないんで、 だから7月31日の次に7月1日が狂って…いや来るって事態を今覚えてる限り5回やってるって寸法な。 つまり、俺はここんとこ7月を5回と31分の30回繰り返してるわけだ。 うおぉ31て13くらいで割り切れそうなエロい顔してナニゲに素数なんだな。 清純派かよ。 31以外分子になに来ても約分できねぇ。 だから、この『半年』の間に期末試験をしたり、生徒の一学期の成績表を付けたりを6回やってることになる。 もうちゃんとやったのは一回目だけな。 あとは一回やった分の覚えてる通りにこなすだけってか、 ここだけの話、一回目もたいがいいい加減にやってたから、繰り返すにあたって何気に改定を加えたりしてやった。 6回目の今なんかもはや精度あがりまくって完璧がヤバいレベルに達してるんじゃねえか。 わかってるとは思うが、7月を繰り返してると自覚してんのは俺だけな。 俺以外は完全にフリダシニモドルで時間ももちろん記憶もリセット。 これだって始めは皆が示し合わせたドッキリかと思ったがそんなことはなかったぜ。 そんなであと黒崎の誕生日祝いも…6回同じようにやった。やらせていただいた。 映画行って飯食って。映画も同じの6回見た。 もう覚えちまった。セリフもなんもかも。 ただ同じようにと言いつつ飯は6回とも全部変えた。 あっさりした和の黒崎、鮮やかな中華の黒崎、優雅なイタリアンの黒崎、 スパイシーなインドの黒崎、酒が進む焼き鳥の黒崎、つるっとコシのある讃岐の黒崎だ。 よかったぜ。 黒崎の誕生日祝いは6回とも全部外してない自信がある。 その証拠に先生ありがとうってそれはそれは眩しい笑顔を見せてくれるんだ。 それは俺、よくやった。 でも、黒崎の居ない、てか黒崎が足りない俺の誕生日が5回。 実のところ、俺誕がうまく行ったところで8月が来るって保証はないんだ。 ただ、何回も空振りを重ねる毎に何としても黒崎と俺誕やりたいって気持ちも強くなってる。 その上で憶測上等でぶっちゃけるがおそらくこの7月リセット&ループの引き金ってか原因は この俺の『後悔』と『願望』なんじゃねぇかと思うんだ。 もう6回も同じ場所ってか時間で足踏みしてるような状態で 最初はうすうすそうなんじゃないかと程度だったが、 今じゃほぼそうなんだという認識だ。 だから今回は、今回こそ、俺は『後悔』しないように『願望』を遂げて、このループの原因を取り払いたいと思ってる。 そしてジュライにジュライを重ねた重重ジュウジュウジュジュジュライ(1回多いがサービスな) の日々にサヨナラバイバイして 未来の扉を開けてカモンオーガニズムじゃないオーガストするんだ。 そのために黒崎と俺誕。 31日は、明日。 てか、俺何歳になるんだっけ? あまりに繰り返してきたからもう忘れちまいそうだ。 黒崎は毎度毎度(ループの度毎)、誕生日のリクエストを訊いてくるんだが、 俺は毎度毎度、じゃあ黒崎の時間を頂くと答えてる。今回も。 まぁ、時間だけじゃないつもりだけどな。頂くのは。 ていうか、その、そっちのほうのいった抱っきま〜す♪もこのループに陥ってからないんだもんなぁ。 ×6で実質半年禁欲よ。お預けよ。 特に火事騒ぎんときがたしか絵に描いたようなお預けだったんだ。 うっひゃー今晩やりまっせって盛り上がってる矢先に邪魔が入るんだもんなぁ。 で、畳み掛けるようにリセットな。 有無を言わせずまた7月1日。 ほんとマジでトホホだぜ。折れるわ。 心が。 で、今年…じゃねぇ今回は場所変えようかと。 その、クーラーが壊れるとか床下浸水とか近所の火事の煙とかいう日常が追っかけて来ないところまで。 てか、床下浸水も近所火事もすでに『日常』とは言い難いけどな。 そもそもさすがに一日じゃたいしたとこイケナイけど、まぁ許してくれ。 そう、俺だって馬鹿じゃねぇ。 いい加減5回も失敗してんだ。その中から何も学んでないわけじゃない。 今回はばっちり準備させていただいたぜ。 場所を変える、つまり『日常』から抜け出す手筈をな。 車借りて、宿とった。大きな声じゃ言えないが一泊な。 現実逃避したところで、何も変わらないという意見もあるだろう。 地震も台風も火事もオヤジも来る時ゃ来るんだ。それはわかってる。 けど、この現状の俺にとって、何が優先されるかってぇと、 世界の平和より、黒崎と過ごす誕生日の夜という時間が確保されるかなんだ。多分。 つまり世界がぶっ壊れたとしても、 その時に、俺誕の時に黒崎が俺の傍に居てくれたらいい。…んじゃないかな。 そのために、言い方が悪いんだが黒崎を拉致る。 平和的に拉致る。 俺の…いや、俺と黒崎の未来のために。…と信じて。 世界がぶっ壊れて未来もクソもあるかって話はまた今度な。 そしてついに迎える6回目の俺誕の朝。 違った。 ええと、今年の6回目の俺誕てことだぜ。 生まれてから6回目てわけじゃない。 でないと俺まだ小学校にすら上がってないってことになるじゃねえか。 園児ってやつか。 ん。エンジみたいな名前のやつ居たな。 サンジだったかゲンジだったか。まあいいや。 それにしても暑い。朝から暑い。 台風は今回は無しだ。 たとえ今南の海の上で発生したとしても、今日中にこっちまで上陸してくることはないだろ。 そんな台風だったらなんか軍事的に使えそうな気がする。いや軍事的でなくてもいいけど。 ジャワジャワと蝉の声が頑張れよと言っている。 そんな気が、した、 だけだった。 よく聞いたらやっぱりジャワジャワだった。 そうだ、繰り返しやってくる7月1日は まずこの蝉の声が聞こえないってことから違和感を覚えだしてたんだっけ。 蝉時雨っつーか蝉の大合唱豪雨のなか今日の拉致計画の為… じゃなかった俺誕成功のために昨日からレンタルしてある車を取りにパーキングに向かう。 しかしこの100円パーキングってやつは女に貢がす寄生虫野郎に似て始めは本当にいい仕事しやがる。 優しいのは最初だけっつーか一日最大500円てのは最初の24時間だけな。 あとは本性出して来やがって普通に1時間ごとに100円よこせとかほざくからしょっぱなこういう調子いいやつは実際油断ならん。 キーを回してドアを開けてまずは乗り込まずにエンジンだけかけて、朝とはいえ上がりまくった車内の空気をクーラーで冷やす。 あああ〜。 シートもホカホカしてんだろな。いやだなぁ。 しかしその間に黒崎にイマカラムカウのメールを打つ。 なんでカタカナなんだ。 電報か。 電報なら自分で届けたほうが今は早いな。 そして頃良く冷えた車内に乗り込んで、 クーラーの冷気でちょっと撫でた位では収まるわけがないシートの熱さを肌で感じ、 シートベルトによってその情熱にほぼ直の状態で触れ感涙するケツと背中をどうすることも出来ないままクーラーMAXにして走る。 打ち合わせた場所にオレンジ色が輝いてる。 黒崎だ。 今日も黒崎ってばマジ黒崎。 車を止めて黒崎が助手席のドアを開けるまでに助手席シートに手を置いて温度を確認する。 ちょうどよく冷めてきていた。クーラーの設定温度を上げた。 ドアが開いて声がする。 「おはようございます、先生」 同時にもわっとした外気もながれこんでくるが、それすら心地よい温度に変えてしまうような笑顔。 何回失敗しても、この笑顔だけは変わらない。 |
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目的地までの道中、ずっと話をしていたのは黒崎のほうだった。 ていうかテンションが高い。さりげなくご機嫌の訳を探ると車でお出かけってのが嬉しいらしい。 「俺ん家、車ないんすよ。親父も免許持ってないし」 「持ってねぇのか?まあ、黒崎ん家の立地ならまあ要らんかもな」 駅も買い物も近い。 「ありがたいことにそうなんです。今まで不便に思ったことないし」 学校には少し遠いかも知れんが歩いて通学できる範囲だ。 「でも、夜中誰か急に病気したらとか…あっ、黒崎んとこが医者か…だったら要らんな」 免許は免許でも医師免許をお持ちでごさったか。これなら車の免許は要らんだろう。 「黒崎は車の免許取るのか?あっ、年がまだか。てぇと先にバイクだな」 言ってちょっとしまったと思った。 あの、エバ…違う、ノバ…サバ…ババ…じゃなくてアバ…だ。そうそうアバラギじゃなくてあばらい。 あいつが最近バイクを手に入れたらしく時々それに跨って学校に来るときがある。 黒崎も一緒にタンデムくらいしてるだろう。 きっとそれが黒崎の頭をよぎってるんだろうが、さすがに口には出しにくい…だろうな。 ![]() 「あいつのあれ、いいな。新車か?」 水を向けてやる。 黒崎はちょっと申し訳ないと言わんばかりに俯くが答える。 「なんか族やめた友だちから譲ってもらったとか」 「族?なら相当イジってんじゃねぇの?ちゃんとメンテ診て貰ってんのか?」 「ちょっとそこはわかんないですけど」 「バイクは調子悪いとたちどころにコケっからな。 コケたら生身だ。車よかヤバいぜ。中古なら尚更ちゃんとしたとこで診て貰えや。事故は将来に響くからな」 そうだ。コケてしまえ。 コケてキンタマ片方と竿の長さ36分の1と太さ直径10分の0.125くらい喪うがいい。 ちょうど一皮剥けた感じになるだろう。 そして包帯で縛られてるうちにリアルなセック◯より自分でするほうに快感を見出すがいい。 そして黒崎と御無沙汰になって黒崎に浮気を疑われるがいい。 そして別れるが、いい。 そのあとはキンタマなんて片方あれば十分だし一皮剥けたあなたのってばジャストフィットよ(ハート) とかほざいてくれる気だてのいい子としあわせになれ。 どうだ輝かしい将来だろう。 黒崎がコクリと頷いた。 だよな。黒崎もそう思うだろ? 「言っときます」 そうだ、何も事故に遭わずとも 黒崎があいつにほかの子と達者で暮らせと宣言すれば万事上手く収まるわけだ。 そりゃいい。 なんて幸先が良いんだ。 これは俺誕、今度こそ貰ったな。 早よ夜来い。 オーガニ…オーガストの夜明けだ。ガイアの夜明けみたいだ。 「先生も乗るんですか?」 「おー。乗るぜ。覚悟しとけ」 「?」 黒崎が不味くはないのですが食べたことないものを口に入れてしまいましたがどうしたら?みたいな顔をした。 そこではっと気づいた。 やべえ。 妄想が横からはみ出してやがった。 ハミ妄だ。 いや横妄か。 慌ててそもそもなんの話だったか手繰る。 あゝ確か気だてのいい子。 …じゃない。キンタマだ… 否… コケるとヤバイやつ。 「あっ、バイクな。乗るぜ。また乗せてやろうか?」 レンタルだけどな。 「それは是非お願いしたいですけど、先生今違うこと考えてませんでした?」 鋭い。 「すまん、考えてた」 謝っとく。ついでに 「エロいことな!」 先回りしとく。 これでコケてキンタマと皮一枚喪えなんて邪悪を考えてたとは気づくまい。 キンタマ以外にちゃんとエロいことも考えてたしな! ははは照れんなよ黒崎。 |
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そんなこんなで幸い渋滞も検問もなく目的地に着いた。 じゃーん。海だぜ。 まあ、めっちゃ綺麗ってわけじゃねぇけど、海水浴場としてはマイナーなんで人は少ない。 多分ちらほら泳いでんのは地元のやつらじゃねぇかな。 宿は町に二軒ある旅館のうち海に近いほうで予約してある。 てか、予約も要らなかったかも知れん。 チェックインの時間にはまだ早かったが、 車の中に荷物置きっ放しはいろいろ良くないから とりあえず荷物だけでも預けられないか交渉しに行くと ヒマなのかなんなのか、チェックインの時間も融通してくれやがることになった。 うおんありがてぇ。 そして部屋で着替えて海に行くことにする。 海に行ってる際携帯をどうしようか考える。 日常からの逃避とか言いながらやはりコレから離れるのは不安だ。 しかし、ここは思い切って置いて行くべきかも知れん。 てか、たとえ持って行っても海に浸かってる間は結局は浜に置いてくだろう。 むしろその方が防犯的にも不安が残るんじゃねぇか。 そういうことを黒崎に相談がてらに言うと 「そうですね」なんて言いながら自分の携帯の電源をさっさと切って鞄の奥に放り込んでしまった。 呆気に取られてる俺に笑顔で返しながら、「だって今日は先生のための時間だし」だと。 またひとつ俺誕成功の階段を上った気になるじゃねぇか。 うん、これは、いけそうだ。 それからはほんとに夏の1ページ。 あまり綺麗じゃない海も、黒崎が居ればとびきりのリゾートだ。 ひと気のない海で泳いだり潜ったり、プカプカ浮いたり、浜辺でゴロゴロしたり。 海の家はなかったが、海岸ぞいの県道にたこ焼きの店があって、そこで腹ごしらえしたりした。 あまりに俺がここらに詳しいから黒崎は「来たことあるんですか」と聞いてきた。 実は、少しばかり住んでいた。 そう言うと「すごい」と目を輝かす。 いつ住んでた?とか なんで少しだけ?とか 聞いて来ないで今だけを愛でてくれてありがとうな。 「いいところですね」 な?いいところだろ。 だから、お前を連れてきたかったんだ。 いいところだが、ただし温泉はない。 旅館は普通に大浴場な。 しかも大浴場といいながらあまり広くない。 まあ、どうせこっちは今夜大欲情するから別に良いんだけど。 俺も黒崎も結構日焼けしていた。 風呂の湯の熱さが背中に染みる。 これは俺が背中犠牲にして騎乗位かとかウキウキ考えつつ浴衣で部屋に戻ると夕飯の準備が出来ていた。 席に着くその前に、ほんの習慣みたいな感じで鞄から携帯を取り出しておもむろに電源を入れた。 とたんに呼び出し音が鳴り出してびっくりする。 あまりにタイミング良く鳴り出すもんだから、 最初どっか設定間違えてこの呼び出し音を起動音にしちまったかと思っちまったぜ。 で、発信者を見て、出ないまま再び電源を切りたくなった。 学校からだ。 黒崎が目を丸くして見ている。 嫌な予感。 あと数時間で俺誕は一点の曇りもないままに終わる…はずなんだ。 そうしたら今日は明日に続くんだ。だから… 出ないでいると呼び出し音は切れた。 静けさを取り戻して少しばかり安堵する。 安堵ついでに楽観視する。 なに、電源オンと着信のタイミングが合ったからなんか重要度が高そうなだけで、 内容はきっとたいした用件じゃない。 明日折り返したっていいじゃないか。 明日なら電話に出てやってもいい。 明日が来るのなら。 いや、たいしたことないのなら、今出ればいいじゃないか。 たかが電話一本だ。 しかも内容はきっとたいしたことじゃない。 出て、さっさと用件済ませてまた俺誕を黒崎と楽しめばいいじゃないか。 そうだ。 小さなトゲでも抜いておく。 そのほうが俺誕もより成功度があがるだろう。 「出なくてよかったんですか?」 黒崎の声。 この問いは電話に出ない俺を訝しんでんのじゃなく、 自分のせいで電話に出れないんじゃないか(だったら席を外すつもり)という配慮から来てるんだろう。 そんな気を遣わせてる時点でもはや暗雲モクモクじゃねーか。 ここは晴らさでか。 折り返すとトーン高めの京都弁が出た。 よかった。 教頭のあいつとか黒髪トレッドのあいつとかサングラスのあいつとか肌の黒いあいつじゃなくてややほっとした。 ほんとうにほっとした。 苦手度は同じ位だが、こいつはまだしつこくないからいい。 「あ、先生?電話繋がりましたわ」 人ごとみたいに言うな。 あとお前も先生なんだから人のこと先生て呼ぶなややこしい。 「すまん、出先でよ」 「そらすんません。あの、出先で悪いんですけど、今から戻ってこれます?」 「はあ?」 即座に電話をたたっ切って何もなかったことにしたくなった。 もしくは、いやいやいやいや今海外だから!とか適当なでまかせで逃げたっていい。 いやだ。戻りたくねぇ。 戻ったら、今回も俺誕は…。 だが、しかし。 「先生のクラスのバイクの彼おりますやろ。髪赤い。あの彼、事故しまして病院運ばれてるんですわ」 な…ん…だと? とっさに黒崎を見る。 話は、聞かれてない。 にも関わらずタンスの角に足の小指を打ちつけたのを堪えているような表情なのはどうしたことなんだ黒崎。 「まあ、ハンドルきりそこねでコケたみたいですわ。人さまにぶつけたとかはないみたいなんですけど。 本人さんも意識あって自分で救急車呼ばはったみたいですし」 セルフ転倒か。アホか。 んなことで救急車呼ぶとか人騒がせな。 勝手にコケたんだから勝手に起きてとっとと帰…あれ? こういうシチュエーション、俺知ってるぞ。しかもごく最近。 昼間の車中の妄想か。 まさか、昼間のハミ妄がほんとにはみ出して現実に…? 「怪我…してんのか?」 キンタマ片方と竿の皮一枚。喪う。 妄想のうちはよかったが、考えてみると想像だけで股間がヒュッてなった。 「そないな話は聞いてませんけど、してるから救急車呼ばはったんでしょうし、 それと一応自損で警察届けなあかんのですけど、先生にこの件お願いでけたらな思て。えろうすんませんけど」 「せやかて」 方言うぜえ。伝染ったじゃねーか。 まあ翻訳するとめんどくさいからお前やれって意味だな。 そのためだけに、出先であろうがなんだろうが呼び戻すとかさすが。 しかも最後の『えろうすんませんけど』はもう完全なる畳み掛け。 申し訳なさに粉飾された丸投げだからな。 これを逃れられるのはおそらく同じく関西棲息のマドモアゼル♯ナニワーゼ48とかいう人種しか居ない。 48は人数とか部族数とかいう噂もあるが多分歳。平均年齢。飴ちゃんが好物。キャンディじゃない飴ちゃん。 やっぱり、トレッドのあいつとかよりコッチのが苦手かも知れん。 しかしエヴァライもたいしたやつだ。キンタマ片方損失と皮一枚ずる剥けの状態でよく意識を保ってやがる。俺は無理だと思う。 確かに容体がどうなってるのか気になる。だが、今日は戻りたく…ない。 ほら、だって今日は6回目の、ようやくここまで漕ぎ着けた6回目の俺誕。 ララヴァイの命に別条がないってんだったら、明日でも8月が来てからでもいいじゃないか。 でも。 「出先て遠いんでっか?ほなしゃーないですけど、なるたけ早よう帰って貰えると助かりますわ」 畳み掛けに譲歩が入ってきた。 やつも電話ばかりしてられないのだろう。 これなら、いける。 すまんなシャバライ、明日、8月1日、担任として行ってやるぜ。 キンタマは残念だったが、それによっていい子が見つかるからな。 だから黒崎のことは俺に任せて成仏しろ。 お前はしあわせになるんだ。 そして俺らもしあわせになるから。 な。黒崎。 てか黒崎だァァァァ!!!! いかんいかんいかん。 黒崎をうっちゃってしまってた。 かわいそうに並べられた夕飯の膳を前にしょんぼりお預け状態だ。 しかも俺ときたらその前で剣呑な内容の電話をしている。 電話の用はこれにて終了。 戻るけど、それは明日。 これで決定だ。 アバタイも大変だったろうが、 俺だって長い戦いしてきて、それが今日やっと報われるんだぜ。 だから一晩くらい、見逃してくれ。な。 「わかった。出来るだけ早く戻るぜ」 「おおきに。たすかりますぅ」 さっさと切り上げる。 「悪かったな」 携帯の電源を落として鞄に放り込む。 さあ、飯食おう。 ここらは海水浴場というよりも漁港で知られてるだけあって海の幸がいいんだ。 「誰か、怪我したんですか」 さっきの電話か。 聞きたくなくても聞こえるよな。 「まあ・・・な」 言葉が濁る。 多分たいしたことないから。 キンタマだけど。 てか、キンタマキンタマ言ってるけど、これ違うだろ。 キンタマの消失は俺の妄想だったろうが。 なら、やつは今どうなってるんだ? 「クラスの誰かっすよね?先生に連絡くるってことは」 黒崎には、関係ない。 ことは、ない。 クラスの誰かって時点で黒崎にも関係がある。 ましてや、あいつだ。 大有りだ。 どうする?言うか? いや、言ったら最後、黒崎のことだから今帰るすぐ帰るって言い出すだろう。 言わないまでも、もう気持ちはここから離れちまうだろう。 それじゃ、困るんだよ。 俺誕、黒崎の全部が必要なんだ。 時間身体言葉目線匂いに体温。そして心だ。気持ちだ。 でないと俺は満足しない。 満足しないってことは、誕生日は失敗で、失敗てことは、 また、繰り返すんだ。 あの飽きるほど繰り返した7月を。 梅雨がまだ明けてなくて、でもって期末試験の問題作りに採点に通知表。 気がついたら梅雨はあけてて蝉が鳴き出して、 あと黒崎の誕生日当日はなんか遠慮して誘えないんだ。 だから誕生日の次の日曜日に映画に誘う。 主役の俳優に代わって俺が出演したっていいくらいにおぼえちまった。 あのな、黒崎、あの主人公助けた雰囲気イケメンのあいつがほんとは悪なんだぜ。 口が裂けても言わないけどな。 でもって黒崎には悪いけど、和中伊印鶏讃岐と食ったからこれ以外でいいか。 そうだ俺トルコ料理食ったことねぇんだ。 飯食ってから歩くんだけど、暑いんだよ。 ほんとは引き止めたいけど、 誕生日おめでとうって言ったらもう、きらっきらの笑顔で先生ありがとうって言うから なんかよこしまなこと出来ないで。 それが毎回。 毎回。 毎回。 もう、いいだろ…。 黒崎の誕生日祝うのは何回やったって楽しいけど、 毎年毎年少しづつ大人になってく黒崎を祝いたいんだ。 こんな、時間の止まったようなとこで俺だけ何回も何回も何回も。 祝っても祝っても祝っても、 虚しいんだ。 だから、もう満足させてくれ。 俺は、進みたいんだ。 進みたい。 今日の続きは明日だと信じてたあの時に。 明日の次は明後日で、今月の次は来月で来月の次は再来月だ。 春がきて夏が来て黒崎の髪が背が少しづつ伸びてくんだ。 そんな未来に。 鞄を探る。 さっき放り込んだ携帯。電源を入れる。 リダイアル。 出たのはキョート弁じゃなくてキョートーだった。 こいつには嫌われてんの分かってるから嫌味のひとつも言われるかと思いきや、ご苦労だなと労われた。 「何回も電話して悪いな。出先なんだ。生徒か運ばれた病院聞くの忘れてた」 「出先なのか。大変だな。少し待っていろ…ああ、××病院だ。駅前の」 「わかった。容体とか聞いてるか?」 「肩の骨ヒビだそうだ。夏休み中かかるらしいぞ。あとは額を四針縫ったらしい」 キンタマじゃないのか。 だったらいい子には巡り合えないかもな。 しかも夏休みまるごとパアか。 かーいそーに。 だったら余計に俺がなんとかしなきゃな。 担任として。 そしてアバライバルとして。 |
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電話を切る。 ご馳走を前に通夜みたく座っている所に料理の膳を迂回して回り込みしゃがんで黒崎に話しかける。 「黒崎、落ち着いて聞いてくれ。 あのな、あいつが事故ったらしい」 言うやいなやみるみる黒崎の顔はこわばって、音こそしなかったがヒュッと息を飲むのがわかった。 ちっ。あいつめ。愛されてやがるぜ。ちくしょうめ。 「命に別条はないんだけどな。入院なんだとよ。…戻るよな?」 戻る。 そう、戻るんだ。 ふりだしに。 「え?でも、先生の誕生日は?」 「また祝ってくれたらいいから」 また繰り返すからまた祝ってくれたらいい。 別の日じゃなくて『今日』また。 そして事故もまたリセットされるからな。 日付けが変わるころにはあいつも怪我する前に戻る。 今度はせいぜい安全運転を口酸っぱに唱えてやるぜ。 知り合いの事故だからすぐ発つというと、旅館の番頭がでてきた。 旅館からしたらめんどくさい客のはずで、 だからキャンセル料以外に迷惑料としてチップすると固辞された。 それよりもと、帰り道中の安全と知り合いの無事を祈られ、 そしてよけりゃまた来てくれ、 当地は朝一の漁で獲れた魚が自慢なのだか、振る舞えなくて残念だ。的なことを言って挨拶された。 驚いた。 なんだ、あったけぇ。 ヤバい。この旅館、見かけはボロいが中は一流だ。 やっぱりいいところだろ?黒崎。 また、来ような。 で、また俺の誕生日、祝ってくれや。 帰りの車中、黒崎は眠そうだった。 そりゃ朝からドライブ→海水浴とやってとどめに心労だもんな。 あの赤パイン野郎、黒崎にこんな苦労かけやがって。 着いたら起こすから気にしないで寝ろと言うと、いえいえ先生にばかりご迷惑かけて寝れませんと強がる。 だが1時間も走らないうちに静かになった。 いい。これでいいんだ。 多分この車が空座町につくまでに日付けが変わる。 そうしたら気がつけばいつも通り俺は自分の部屋で7月1日の朝を迎えるんだ。 この背中の日焼けのヒリヒリもこの胸のモヤモヤも、その頃には消えてる。 隣の黒崎も。 すうすう寝息が聞こえるなかで俺は6回目の黒崎にさよならをした。 さあ、明日からは7回目の7月か。 ジュライにジュライをまたひとつ重ねる。 正しくはジュライにジュライを重ねた重重ジュウジュウジュジュジュライな。 そういえば、これ一回多かったんだよな。サービスとか言っちゃったけど、ホントサービスになっちまった。 まあ、また黒崎が笑ってくれるならそれもまた良しじゃね? てか、今度くらいは違う映画にいくつもりだ。 夜の道路の街灯のオレンジが、眠る黒崎の髪を照らしていた。 |
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おそまつです。 | ||||
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