なぁ黒崎。
次いつ来るの?










たばこの匂いとキスの味
※mmたんありがとう♪





今、禁煙中。
ていうか禁煙に前向き中。

まあ絶対にしなきゃなんねーって話でもないんだけどな。
でもよ。
なんかも、枕がどっちかというとおっさん臭い匂いするんですけど。

最初はああ、枕よお前も歳食うんだなぁとか、枕よ俺より早く逝くのか・・・とかしみじみ思ってたんだが、この間、カーテンまで匂ってた。
カーテン嗅いだときはさすがに原因は俺かって。思ったよ。
なんかラブホみたいな匂いすんの。

あとは、黒崎が。
夏休みに入ってから黒崎がよくこの部屋に来る。
嬉しいよ。嬉しいんだが、来たら結構長く居るからな。
黒崎はこの部屋のラブホみたいな匂いはあんまり気にならない(気を遣って言わないだけかも知れん)ようだが、
長く居るから黒崎の髪やら服やらにラブホみたいな匂いが染み付かないかと思っちまう。
ラブホみたいな匂いがたっぷり染み付くくらいのことしたりするし。


そういうので、この部屋に来てたとか第三者(とくにアイツ)にバレるかも知んねぇだろ?

なんか嫌じゃね?

よしんばアイツにバレなくても、
未成年がおっさんの香りまとってちゃ、家族になにかと素行を疑われる可能性もある。
割とリベラルな黒崎の家みたいだが、
そういうこと疑われて黒崎に門限とか科せられたら、なかなかうちに来れなくなるじゃん。


そこまで考えて、禁煙に前向き中。


とりあえず部屋中に満喫してるどっちかというとおっさんの匂いは、
布の匂いにどうとかのスプレータイプの消臭剤で中和してるんだが、
この「おひさまの香り」ってCMで聞くと「おじさまの香り」に聞こえてやかましわ。
あと「部屋中に満喫」じゃなくて
「部屋中に充満」の間違いでした。
訂正してお詫びだ。


で、まぁ、先々週くらいからやろうかなと思って今に至るわけだ。
一応前向きだぜ。

しかし学校があるときは学校じゃほとんど吸わないが、
うちに居るときは1日一箱は余裕で空けちまう。
それをいきなり急に止めるとなるとちょいと(いや思い切り)気晴らしでもない限り難しい。

という訳で今は「なるべく減らす」ようにしてる段階。

今までは飯食う前に一本、食ったあと二本だったのを、
食ったあとだけ一本にしたりとか。
つまり「減煙」てやつ。
節酒があるなら「節煙」て言葉も有りなのか?


これを「禁煙」にしよっかと前向きに考え中。


ていうか、
なぁ黒崎。
次いつ来るの?


先週来ただろ?

あんとき、ヤッたよな。
そんとき、言ったよな。

「せんせのキス、なんか最近味違う感じがする」って。

トロンとした目しながら言うもんだからドキッとしたぜ。
しっかし本当にお前は敏感だな。浮気した日にゃ絶対バレるな。しないけど。
煙草減らしてっからなって俺言ったよな。

枕が臭かった件はさすがに伏せたけど、
お前に匂いついたら悪いかなって話したら
「別に気にしなくても俺んちそういうのは信用あるから」
とかいいながら
「でも俺のためって言ってくれるのが嬉しい」ってはにかみながら耳元で囁くから、
ああ枕の件は伏せといて良かったなぁとホッとした…んじゃなくて…
たしかにホッともしたけど、
お前って本当、尽くし甲斐があるというか、
お前のためなら本気でちゃんと煙草止めようってあのとき思ったよ。


しかしなかなか難しいんだなこれが。
まぁ難しくなかったらとっくに止めれてるわな。

巷には禁煙グッズも色々出ているけど、
結局「禁煙補助グッズ」であって最終的には本人の意思がラスボスを倒すっちゅうか。
禁煙パイポだの禁煙シールだの装備を充実させても、
勇者がへぼへぼじゃニコチン大王は倒せねーっちゅう話。

で、俺は丸腰でやるつもり。
つーかぶっちゃけ装備買う金がもったいないわ。

煙草1カートンにサンゼンエンがスカッと出せてたのに
禁煙グッズのイチキュッパを出し渋るとか、どういう思考回路なんだか自分でもようわからん。
煙草買わずにイチキュッパ買ったら差額1020円のお得だというのにな。

しかし、薬局の前に煙草の自販機あるの、あれやめてほしい。
薬局の中は禁煙グッズズラリ並べてんだけど、
そんなめっちゃ高くもないけど釣銭小銭で買えるほど安いもんじゃないっていうか。
で、買うのちょっとためらって外出たら自販機があって、
さっき店内で見た値札の数字より自販機に並んでる数字の方が安いの当たり前で。
なんかもー。
札崩さなくても小銭で買えるしな。
タスポ要らない顔認識のやつだし。

気軽に買えちゃうマジック。
あれほんとやめてほしい。

なぁ、俺をどうさせたいの?

禁煙グッズちらつかせて「禁煙のお手伝いして差し上げますわよほほほ」って表向き上品な面しやがって
ほんとは、「は?禁煙?何言ってんの?無理無理無理だってば!さっさと挫折しちまえやひひひひひ」って腹黒く思ってやがんだろ?

そうだよな。
禁煙グッズ買う客は禁煙が成功すりゃもう来ない。
だが喫煙者はずっと煙草を買い続ける。
長い目で見ればどっちの客がおいしいかってなぁ猿じゃねんだからわかるだろが。
ていうか一番おいしい客ってのは
「禁煙したいが失敗しっぱなし」のやつじゃないか?
禁煙グッズもあれこれ買いつつ煙草も買う。
買ってしまう。

鬼じゃねぇか。
禁煙グッズ売りつけといてそのあと自販機に煙草を売らせる。
「うちと自販機は関係ありません」て装ってるが裏で結託してんのはわかってんだぜ。

ほんとそういうの止めてほしい。


だから最近煙草は角のばーちゃんがやってる駄菓子もちょっと置いてる煙草屋で買う。
でもばーちゃん、耳遠いから呼んでもなかなか出てこないのあれは時間ないときとかちょっとキツい。
コンビニも近くにあるからコンビニで買ってもいいけど、コンビニだと他にあれこれ買ってしまう。
なんか便乗商法だと思う。

だから純粋に目的を目的分しか達成できない煙草屋で買うのが一番いいんだと。
駄菓子も置いてるが所詮煙草屋は煙草屋。
餅は餅屋みたいな。

昔は豆腐は豆腐屋に行って買ってたよ。
ウチから鍋持ってな。
鍋に水を張って豆腐を入れてもらってこぼれないように注意しながらうちに帰る。
途中友だちに会っても暗黙で「おつかい中」てのがわかってじゃあとでなってなる。
野菜は八百屋で売ってた。800屋だぞ!百貨店のざっと八倍だ。なにが八倍かは知らんが豪快でいいと思う。
でもって魚は鮮魚屋。酒は酒屋。

学生んとき塾のバイトで小学一年生のテスト採点やったことあるが、
やさいはどこでうってるでしょう。
さかなはどこでうってるでしょう。
おにくは(以下略)
て問題にすべて「イトーヨーカドー」って書いてた女の子がいたな。
ある意味リアルからちゃんと学習してるいい子だと思うけどな。
いい嫁さんになってほしいもんだ。

で、なんだった?

ああ煙草屋だ。

ばーちゃんが耳遠くて。
でも、いいばーちゃんで。
煙草1カートン買ったらライターかゴミ袋がつくんだけど、
どっちも要らねーって言ったらうまい棒一本つけてくれたよ。
でも夏場にチョコレート味だもんなぁ。
中で明らかにチョコレートがにゅるってなってた。
だからまず冷蔵庫で冷やしてからおいしくいただいたぜ。
ていうかなにあれ?
冷やしうまい棒チョコレート。超うまいんですけど。
うまい棒チョコレートが超うまい棒チョコレートに進化してた。
GJばーちゃん。
夏場にうまい棒チョコレートは普通買わないからばーちゃんがくれなかったら、
冷やしうまい棒チョコレートがこんなにうまいってずっと知らないまま馬齢を重ねてたと思うと
この地に越してきてばーちゃんに会えてかなり感謝してんだ。


で、何だった?

煙草屋だ。

違う、禁煙だ。
俺何してんの?
黒崎のために禁煙すんだろ?
何ばーちゃんとこで煙草1カートン買ってうまい棒貰ってんだよ。
いいばーちゃんだけどな。

うまい棒なんか自前で買えばいいじゃねぇか俺。
煙草一箱の出費でうまい棒30本買えるわ。
そこの煙草屋で買えばいいだろ。
そしたらいいばーちゃんにまた会えるし。
別にばーちゃんに会いたいから煙草買ってるって訳じゃねぇんだけど。
別に運命の出会いじゃねぇし。
耳遠いからな。ちょ心配だわ。
時間ないときとかマジ困るんだけど。


で、何だった?

ばーちゃんだ。
違う。

うまい棒だ。
違う。

煙草屋だ。
違う。

禁煙だ。
違う。

…。
あれっ…?

おわぁ禁煙だ。
禁煙で合ってたわ。
禁煙まで否定したらこの話成立しねーじゃんかよ。


つー訳で、おもいきり話戻すぜ。
煙草止めようって禁煙しよっかって思った話。
黒崎が来てて。
キスの味が違うなんてドキッとすること言われて。


で、そんときの黒崎の話にゃ続きがあるんだ。
減らしてはいるが、
ニコチン大王と薬局は裏で結託してるだとか、
煙草屋のばーちゃんの甘い誘惑だとかに阻まれてなかなか難しいもんだと愚痴めいたピロートークを俺はかましてたんだ。

黒崎はふうんと云う感じに聞いていたが、ちょっとして
「先生てガムとか好きじゃなかったですよね?」
と訊いてきた。
好きじゃねぇ。
あと豆とかも苦手。
歯にくっついたりはざかったりするようなもんはダメだなと言ったら


「じゃあ…これなら?」
と言って俺の上に覆い被さってきて、
「先生が口寂しいなら」と言いながら不器用に唇を塞いできた。

何回やってもちっとも上手くならないがちがちのキス。
でも、触れた唇からなんか満ちてふわっとした気持ちになるから不思議だ。


誤解があるようだが、煙草止める=口寂しいというのとはちょっと違う。
煙草を減らしても俺自身は口寂しいとは感じてない。
ただ、何年かは生活の中にしっかり根付いてた「いつものあれ」がないっていう喪失感みたいなのと、
それとは別に
埋め方が、
塞ぎ方がわからない穴みたいなのがぽっかり開いた気がして、
どうしていいのかわからないんだ。
手持ち無沙汰というか。

その穴みたいなのがなんだかふわふわしたもんで満ちてく感じがした。

下手な鉄砲も数打ちゃ戦術なのかわからんが、
チュッチュッとひとしきり雨あられのあとニコっと笑いやがる。

こっちは下手な豆鉄砲食らったハトみたいな気分だ。

だが穴みたいなのは確実に小さくなってる気がした。
ほんの少しだが。


「夏休み限定ですけど」

「じゃあ俺は夏休み終わるまで煙草完全止めなきゃなんねぇじゃんかよ」

口寂しいという誤解は解かないでおこう。

お前がこの穴を塞ぎに来てくれるのなら、
俺は難なく煙草止められそうな気がする。



だから、
なぁ黒崎。
次いつ来るの?


早く来てくんねーとまた俺、ばーちゃんとこ走っちまうぜ。
まぁうまい棒チョコレート買うだけにしとくから。
冷やしうまい棒チョコレート、お前の分も作っといてやっから。


だからメールくれ。

寂しいし。





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