■小春日和■ | |
「3周年のパーティー?」
きょとんとした顔で聞き返す二人に、俺はあくまで笑顔でうなづいた。
偶然二人が尋ねて来たのは、ついさっき。
会ったとたん睨みあい始めた二人の間に割り込んで、俺は一つの提案をした。
「知り合いの3周年パーティーに呼ばれてるんだけど」
とうとつな言葉に二人は動きを止めて、まじまじと俺を見つめてくる。
「一緒に行かね?」
問答無用のダメ押しに、二人はよくわかんねぇって顔のままうなづいた。
結局。
お祝いは多いほうが楽しいし、って俺の言葉に二人を
付きあわせ、持ってくプレゼントを買うのにも付きあわせた。
最初はぶつぶつ言ってた二人も、
途中からあーだこーだと楽しそうに選び出し。 そんな二人のテンションに巻き込まれた俺も、負けじと選びまくってしまった。
レジに積み上げたプレゼントに3人で笑いながら、
とどめとばかりに突入したケーキ屋で特大のケーキも買い込んで。
|
|
![]() |
3人でなんとかわけた紙袋を持ちながら、 俺達は今レンガ敷きの商店街を、パーティー会場までのんびりと歩いていた。 風は少しひんやりしているけど太陽の光りは暖かくて、
お祝いにぴったりの天気になんとなくうきうきした気分になってくる。
「おい!黒崎あれ!」
突然後から呼ばれて振り返ると、必死で何かを指差すグリムジョーの姿。
うん?とその先を見れば・・・
さ、魚屋? 「魚買って、どーすんだ!」
固まる俺より先に、恋次が怒鳴る。
「プレゼントってんなら、せめて鯛焼きだろーが!」
プレゼントの追加に魚を主張するグリムジョーに、
なぜか鯛焼きを主張しだす恋次。
「どっちも、違うから・・・」
思わず力が抜けてつぶやく俺の前で、言い合う二人。
あーもう、コイツらは。
ため息つきながら、でも俺は笑いがこみ上げてきた。
こういうのが俺達らしいか、と二人を見ながら妙に納得してしまう。
「ほら、遅れるから行くぞ」
わざとそっけなく言って歩き出せば、あわててついて来る気配。
ちらっと後を見れば、顔はまだ不機嫌そうだがおとなしく歩いてきてる。
その姿に俺はまた笑いがこみ上げてくる。
普通ならこうやって、3人で行動するなんてありえないけど。
笑いあって、言いあって、でも3人で一緒にいて。
暖かな小春日和の、思いもしなかった時間。
横に並んできた二人を見て、穏やかに晴れた秋空を
見上げて俺は微笑んだ。
たまにはいいよな?
こんな日があっても、な。
|