『幕間劇』
東雲さん、ありがとうございます(人-)謝謝
 
 
風すら凪いだ穏やかな午後の湖面を、
小舟はひっそりと漂っていた。
 
吹く風すらないのに癖になっているのか
浦原は帽子を押さえると、藍色の湖面から
傍らで安らかに眠る子供に視線を向けた。
死神姿のまま無防備に眠る一護に、ふと
笑みがこぼれる。
 
このまま攫ってしまおうか
 
帽子の影から常とは違う笑みで言葉が
落ちる。
 
だがどこに?
 
浦原は自分の言葉にさもおかしそうに
肩を揺らすと、心の中で問い返した。
 
行く場所など どこにあるのか
 
生しか知らぬただの「人」ならば、死後の
世界を夢見ることもできるだろう。
だが自分は、この子ですら、すでに「死後
の世界」を知っている。
そう、生が終わっても
 
「死後の世界と言う現実」
 
が待っているだけ。
くっと、口角を上げて、浦原は目の前の
一護を見つめた。
何も知らぬげに無邪気に眠る子供。

見つめれば見つめるだけ湧き上がってくる、
掴みきれぬ想い。
それに押されるように、浦原はすっと手を
一護に伸ばした。
あと少しで、一護の指が触れる。
 
その時、凪いでいた風がざあっと吹き
抜けた。
一瞬の風に遮られたように、指が止まる。
浦原は風の行方を見るようにゆっくり頭を
めぐらしてから、伸ばしたままの指先と一護
を見遣った。
そして指先を軽く握り込むと、、一護から
視線をずらすようにまた静かになった湖面
に顔を向けた。
 
「長く居すぎましたねぇ」
濃藍へと色を変えた湖面に呟く。
いまだ眠る一護へ向き直り、浦原は帽子を
軽く押さえ俯いた。
 
「さて、そろそろ戻りましょうかぁ」
しばらくして顔を上げると、岸に向けて静かに
舟を操る。
そして視線だけを一護に向けると、
いつもの「浦原」の顔で笑った。

-終-























応接室090620の
←こちらの絵をご覧くださった
東雲さんがSSを書いてくださいました。
私は私でこの絵にも
「あえて語らぬ部分」を忍ばせたのですが
その部分を見事読み取ってくださった上に
さらなる深みをプラスして
お話を書いてくださいました。
ありがとうございます。
挿絵ですが、味噌に醤油かとおもいつつ
SSからのイメージを描かせていただきました。
色が、SS中の表現や左の絵とは
ずいぶん違ってしまってますが
SS中の「時間」が
とまっているようにも思えて
一瞬の刹那に色をつけるならば
それは光と闇に近い色だろうと思って
ならば金色っぽい色を基本にさせてもらっています。
「いただきもの」をいいことに
イメージいじくりたおしてすみませんでした。

SSの拙サイトお披露目の快諾もふくめて
東雲さん、ありがとうございました。


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