☆.。.:*・゜Uさんお誕生日おめでとうございます☆.。.:*・゜




Rhapsody in Blue
SS/mmたん 絵/海軍

オンマウスで画像が変わる部分が二箇所あります。どこでしょ〜?(*^-^*)







なんとなく関連っぽいイラスト。
「グリムジョーなんかもう知らねぇっ!もう来んなっ!」


2人で居る事を知られないよう、普段は部屋では必要以上に静かにしているのに。
それすらも忘れて、俺は感情のままにデカい声を出していた。


破面なグリムジョーに、人間が生活している世界の枠を当てはめるのは難しい事は、俺だって分かってる。
だから極力妥協はしてきた。

だけどこの有様はどうだ?
部屋に転がりこんで来るたびに、身体中が傷だらけで服も千切れてる。
心配して理由を聞いても何も言わねぇ。
しつこく食い下がれば、勢いのまま押し倒してくる。


そりゃあ、俺だってグリムジョーが好きだ。
たった16年しか生きてないけど。
悔しいぐらい、こんなに大切に思った奴は居なかったんだ。

男同士とか、人間と破面とか、常識のモノサシじゃ計れないような感情の上に成り立ってしまった思い。
でも…でも…そんな肉体ばっかり求めるもんじゃねぇだろ?
いや、もしかしたら破面にとっては、身体を重ねる事で欠落した感情を埋められるのかもしれないけれど。

「あぁ、分かった。じゃあな、黒崎…」

ボソッとそれだけ呟いて、窓を軽く跨いでグリムジョーの姿は消えた。


これっきり、グリムジョーは来ないかもしれない。
だけど言わずにはいられなかった。
それはこの先の2人の関係を、自分1人で背負っていくには自信がなかったからかもしれない。

さっきまでグリムジョーが横たわっていたベッドに顔をうずめ、
俺は泣きたい気持ちをシーツに押し付けるしか出来なかった。









あれから何日経っただろう。
言葉のとおり、パッタリとグリムジョーは来なくなった。
あの後ろ姿が、今もまだ瞼に焼き付いてる。

相変わらず窓は開けてあるけど、誰もその場所を通った形跡はなかった。

そして今夜もくすぶる思いを抱えて、ウトウトと浅い眠りの中に俺はいた。
寝返りをうったその時、「ギャッ」と声がした。
「わりいっ!グリムジョー」

…って、アイツは居なかったんだっけ。
という事は、この声は何だ?

慌てて起きあがると、ベッドの隅に一匹の白い猫がいた。
恨めしげに見上げる蒼い瞳につられて、つい「ゴメン」と言ってしまった。

開けっ放しだった窓から入って来たのだろうか。
「オマエ…なんでここにいんの?」
会話出来る訳もないのについ声をかけてみたが、猫はフンとした顔を返してベッドの上でまあるくなった。
「ここ、誰の部屋だと思ってんだよ…」
そういえば、グリムジョーにもそんな事を何度も言ってたっけ。

ボンヤリと眺めていた猫の背中に、まるい歪なブチ模様がある事に気がついた。
白い毛並みに蒼い瞳。
そしてブチは孔のように見える。
見慣れた面影が頭を掠めていく。
猫の身体をひっくり返して、腹の方も確認してみたかったが、
さすがにそんな事したらひっかかれるに違いない。
興味はあったが、俺は猫に触れもせずに隣に横たわった。
「オマエ、首輪もしてないから野良なのか?でも随分とプライド高そうだな…」
かける言葉にも興味を示さない猫。
招かれざる客のはずなのに、今の俺には小さな温もりがそばに在る事が嬉しかった。


猫は翌朝には姿を消していたが、夜になるとひょっこり顔を出すようになった。
知らぬ間に来ては、ベッドの上でゴロリとしている。
自由気ままなその仕草を見ているだけで、気持ちが潤っていく気がした。

必要以上に声をかけず、テリトリーを邪魔せずにしていると、猫は徐々に甘える顔も見せ始めた。
身体を撫でる事も許し、膝の上にも乗るようになった。
ずっと気になっていた腹を見た時には、想像通りの結果にひとり笑ってしまった。

猫は俺の笑い声に不満そうだったが、ニャアとひと鳴きしてまた膝の上でまるくなった。

アイツはどうしているんだろう…。

「なぁ、ジョー」

いつしか俺は、猫に誰かさんを連想させるような名前まで付けて、呼びかけるようになっていた。
「オマエは俺に会えなかったら寂しいか?」
ベッドの上に寝転びながら、隣で身繕いをするジョーに語りかけてみた。
「俺、アイツに会えない事が
こんなに寂しいなんて思わなかった。
今までだって、
何日も会えなかった事はザラだったけどさ…」

     
フゥン…それで?と言わんばかりに、蒼い瞳はチラッと俺を伺う。
「俺、アイツと居られるだけでいい…。
オマエみたいに何も言わなくても…存在(い)て欲し……」




なんだか胸がいっぱいになって、言葉が詰まってしまった。
潤んでぼやけていくジョーの姿。
ジョーはゆっくりと伸びをして、ニャアとひと鳴きして寄り添ってきた。
その声が「一護」と呼びかけられた気がした。


強くなりたい。
何ものにも揺るがされずに。
強くなろう。
運命に抗えるほどに。
ジョーの身体を撫でながら瞼を閉じる。
生きる世界は違えど、自分の思いを信じられれば、また必ず会えるはずだ。
「ニャア」
オマエもそう思ってくれるか?
優しい温もりに触れながら、夜に意識を埋めていった。


「…黒崎」

懐かしい声がする。
アイツに会いたいあまり、夢でも見てしまったのだろうか。
だけど、目を開いたら夢も終わってしまう気がする。

「黒崎」

いや、夢でもその姿を見ておきたい。
目を開けなきゃ見られないよな。
ゆっくりと目を開くと、窓の縁にドッカリと座っているグリムジョーが居た。
 慌てて飛び起きて窓へと近づく。

「グリムジョー…?」
「よぉ、黒崎」
「…なん…で?」
「来たかったから来た。そんだけ」
相変わらず傷だらけで。
ニヤリと笑う姿はおんなじで。
ゆっくりと部屋に入ってくると、決まり悪そうに頭を掻いた。
  
「こっちに来る黒腔のメインルート使うと、藍染たちにバレんだよ。霊子の薄いとこ通るしかねぇから、すぐこのザマだぜ…」
ボソッと呟くグリムジョーについ笑ってしまう。


「やっと笑ったな」
「…え?」


「最近の黒崎、ずっと苦しそうな顔ばっかしてたからな」
「そう、か?」
自分が知らないうちに壁をつくり、塞ぎ込んでいたのかもしれない。


「会いたかった…」
逞しい腕にちっぽけな自分を包み込まれて、胸がいっぱいになる。
「此処に来んのはしんどいけどよ。黒崎に会えりゃそれでいい。だから…」
「…だから?」
「笑ってろ」

バカだな。オマエが居なきゃ笑えねぇよ。
そう言い返したかったけど、その言葉は唇に塞がれてしまった。
  



その日以来、ジョーの姿は見かけなくなった。
あの夜も、気がついた時には居なくなっていた。
もしかしたら、俺が居ない時に来て、グリムジョーと鉢合わせしたのかとも思ったが、そんな事もないらしい。
ベッドの上でゴロリとしているデカい姿に、ジョーの面影を重ねてみる。
オマエにもまた、いつか会えるよな。



「一護?」
呼ばれた声がニャアと聞こえた気がした。

 



ボツカットです。